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彼のように几帳面な字で。
一つ一つの字を、彼を想って書いていく。
幸い、そのコンテストは未完結作品でも受け付けていたのだ。
彼は、応募用紙に、詳細をきちんと書いていた。
だから、私が途中までを綴ることを望んでいたんじゃないかって…うぬぼれだけど、思う。
そんな日が過ぎて、クリスマスが来た頃、アルバイトの女性があわただしく私に駆け寄って来て、コンテストの結果発表一覧を見せた。
「棚橋さん!どうですか?!彼…えーと、赤石さんの名前、ありますか?!」
「……。」
赤、石…文人。
「赤石…さん…っ、。」
その結果に、また涙が溢れた。
私の物語は、途中で終わりを迎えた彼と私の物語は、
「一番、いい賞でした…っ!」
「わっ…!本当じゃないですか?!」
審査員の方々のコメント欄に、一言。
『エンディングがとても気になる作品です。』
…ごめんなさい…。
エンディングは、…私達のエンディングは…。
残酷に、終わりを迎えて…。
『一生、忘れられないような恋が描かれていました。』
一生…。
そう。決して、私は忘れない。
彼と過ごした時間も、彼がくれたこの瞬間も、彼が綴ったこの一冊の本も…。
きっと、忘れない。
見えてる?赤石さん。
「おめでとうございます。」
またいつでも書きに来てくださいと、叶わないながらも呟き、願った。
ただ残酷なだけのエンディングじゃない。
私達のエンディングは、最後に私が完結させよう。
必ず、ハッピーエンドになるように。
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