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「あー、本当につまんない。」
ふと心の声が漏れ出てしまった。
手に持っているのはファンタジーな世界がモチーフの本。
私の愛読書だ。
この本を読む度に羨ましさで溜息が出る。
私はファンタジーが大好きな
そこら辺にいる妄想女子だ。
妄想に過ぎないとわかっていても
夢を見ずにはいられない。
「お前毎日そればっかりだな。」
急に隣から声を掛けられた。
声からすぐ幼馴染のあいつとわかる。
私は彼に向かって大袈裟に溜め息を吐く。
「はぁ……。」
「わかりにくいから透明のまま話しかけないでほしいんだけど。」
見えないけど背の高い彼に合わせて上を向く。
自然と目に入るのは羽を羽ばたかせ空を飛んでいる人。
「いやぁ、ごめんごめん。」
今度は前から聞こえた。
完全に遊ばれている。
一応前に目をやると今度は何処ぞのマダムがユニコーンを散歩させている。
そう。
これが私の
つまらない日常。
この世界に嫌になった時はいつも本に逃げ込む。
空を飛ぶ人や能力者やカラフルなユニコーンがいる世界で
透明人間の隣を歩く私は
この本の中みたいに
車で移動して能力は使わず可愛い犬を飼う世界で
普通の男の子の隣を歩ける女の子に
夢を見続ける。
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