第三の犠牲者

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一子の人差し指が動いた。轟音が、大気を揺るがした。 四季村が、どっと倒れた。 四季村が撃たれた。側頭部を、撃たれた。――至近距離から、四季村が拳銃で撃たれたのだ。 頭をガクンと傾けて倒れる四季村の姿が、三河の瞼の裏に、残像した。 「四季村くん!」三河が叫ぶ。 一子の青白い顔が、網膜の奥で揺れた。 一子。人の命の重さを、枯葉ほどにも思わぬ悪鬼。世にも恐ろしい女が、眉ひとつ動かさず、上目遣いとなって三河を見つめている。一子が、三河の身体の中心辺りを狙いながら、拳銃を握った右手を真っ直ぐ突き出した。 一子の瞳孔が、狭まった。 一子が、再び撃った。轟音。拡がる硝煙の香りが、死線を意識させる。咄嗟に三河は身を翻し、扉をくぐって廊下へ転がり出た。すぐに立ち上がる。おろおろしているニーナの肩を抱き、階段目指して全力で走った。 「ちょっと、何いまの音! 四季村は? ねえ、四季村は?」 ニーナがうわ言のようにつぶやいている。 「四季村くんは、撃たれた」 走りながら、三河が叫ぶ。 「四季村くんは、頭を撃たれた。撃ったのは一瀬一子」 「四季村! 待って、四季村が!」 ニーナが泣き叫んでいる。 「四季村を助けないと」 「四季村くんは死んだんだ!」 背後から、銃声。弾道が耳元をかすめる。衝撃波を間近に食らったせいか、耳鳴りがする。 ニーナが悲鳴した。だが、大丈夫だ。弾道はかろうじて逸れている。 ニーナを強引に引きずって、階段を降りた。 「いま戻ったら、一瀬から俺達ふたりとも撃ち殺される」 「四季村! 四季村!」 ニーナを引きずりながら、居間へと逃げ込んだ。扉の隙間から、階段の様子を伺った。一子が降りてくる気配はない。 三河は、左手の刀を手繰り寄せた。
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