第一章 悪戯

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 肩に手が置かれ、ふと首をよこすとルキアノスの笑顔があった。 「お疲れ様。まぁ、まずは実践してみようじゃあないか。君の言うとおり、何か弊害が起きるようなら、また皆で知恵を出し合おう」  いつもの、明るい笑顔。  先程までの、真剣な対立者の厳しいまなざしはどこへやら。  彼の、後に尾を引かない前向きな性格が、時には癪に障ることもある。 「そうだな」  とってつけたような返事をし、レジュメをかき集めていると、同席していた双子の弟・ジーグがやってきた。 「ギル、ちょっと来てくれ」  そう言って、ルキアノスからギルを遠ざけるジーグ。  双子だからこそ、彼の気遣いが手に取るようにわかる。  ジーグは、わざと私をルキアノスから離してくれたのだ。これ以上、私の気持ちが逆立たないように。
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