誘拐

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「お公家って薄情ですね。」 寺島は短刀をもてあそぶ。 久坂は鷹司の奥方か、姫のものだろう、矢鱈と装飾が施された几帳に掛けられた打掛をさらった。 「哀れなもんじゃ。俺らはすがっちょったのか。」 「…通。お前だけでも逃げぇ。 お前がおらんようなったら長州はしまいじゃ。」 寺島の言葉に首を振る。 「高杉がおる。心配せんでえぇ。」 「高杉くんか…。アホじゃけど、なんとかしてくれるだろう。 」 「だな。」 「あ、それと辰路がお前の子を身籠ってたぞ。」 「え。」
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