9/9
前へ
/38ページ
次へ
カナメ大将は微笑むと、長身をユラリと揺らして悪魔王サタンの方へと向かった。 ゼンは黒土を抱えて階段を駆け上り、地下鉄を離れた。 さすがサタンの結界は広い。 地下鉄を出ても、黄金色の空は広がり続け、 走っても走っても、人一人として見かけることがなかった。 ゼンは地上に出て十五分は走り続けた。 サタンの結界内ギリギリまで逃げ、 十分な距離を取ったゼンは、ビルの屋上で黒土を降ろした。 戻ったところで決着はついている。そう悟ったのだろう。 黒土は座り込み、文句を吐きながら地下鉄の方角を睨みつけた。 地下鉄では激しい攻防が行われているのだろう。 遠くの方でビルが飲まれていくのが見えた。 ゼンも腰掛け、落胆の息を漏らした。 「数百人は死ぬだろうな……」 黒土は唇を噛み、広がる光景を睨み続ける。 「次はもっと連携を練習してだな……」 「連携が原因じゃねぇ」 「……じゃ、何が原因だ?」 「俺が……弱かっただけだ……」 カナメ大将の呪具が本領を発揮したのだろう。 遠くの方で赤い光線が真上に伸び、金色に輝く雲を割った。 戦闘の終了を告げるかのように、 金色の雲が散っていった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加