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三
サタン襲来から三日間――。
カナメ大将の捜索は続けられ、三日目の夕方に打ち切られた。
使徒会総帥アマダは、疲弊する使徒会の使徒たちを一堂に集め、
悔しさをにじませながら告げた。
「残念ながら、カナメ大将は帰って来ませんでした……」
カナメ大将は使徒に珍しく、
実力だけでなく、人徳もある上司だった。
それ故に、使徒たちの落胆は大きい。
誰一人、言葉を発する者はいなかった。
「頭部が見つからなければ、喰われて樹化したということになります。
カナメ大将は樹化したと考えるしかないでしょう」
「ちくしょう……」
「サタンめ……」
カナメ大将の樹化を悲しむ者たちが慟哭の声を上げた。
彼らの悲しみを鎮めるように、アマダ総帥が優しく声をかける。
「仮にサタンを抑えられなければ、数万人単位の死者が出ていました。
過去の顕現でも、世界規模の戦争や大虐殺に発展しました。
それを最小限に抑えられたのは、カナメ大将の賞賛すべき功績です」
確かに過去のサタン顕現と比べれば被害は小さかった。
しかし、200人の地下鉄事故の現場を目にすれば、
とても「良かった」とは言える筈もなかった。
白戸ゼンは己の無力さに歯がみする。
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