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急いでいる風には見えないものの、着替えは迅速に終わった。
帯びを締めるタロウは不機嫌そうに振り返る。
「カラクリは女ばっかり狙うんだよ。女装して襲わせれば隙を突けるだろ」
「しかし……そりゃ、アレだな。卑怯じゃないか」
「卑怯だ何だ言って堂々と戦い、背を射抜かれるのか?
正義は勝者にこそある。勝てなきゃ何も残らないんだよ」
卑怯というワードが出た途端、黒土が饒舌になったのは、
戦国時代に何かしらの苦い思い出でもあるのだろうか。
「そりゃ、過去に裏切られたからそう思うのか?」
黒土は静かに首を横に振った。
「裏切られたのは俺じゃねぇよ。俺の君主だ。
だがな、君主はさほど気にしていなかった」
着物姿の黒土は髪も結っているからか、女にしか見えない。
羽織を着ると鏡を見ながら丁寧に髪飾りまで刺している。
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