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ほくろ
◇
机に頬杖をついて、窓の外に目を向ける。
初夏の木々が放つ青くさい香りに鼻をくすぐられ、これから暑くなるな、と思う。途端にひどく憂鬱な気分になり、授業中にも関わらず、思わず深いため息を洩らしてしまった。
夏、半袖の季節。一年中長袖で通す俺――深見叶(フカミカナエ)にとって、最も忌まわしい季節だ。
日焼けしたくない女子ならまだしも、真夏の盛りにも長袖シャツのまま過ごす男子なんて、学年中見渡したって俺くらいのもの。どうしたって悪目立ちしてしまうのだ。
たとえ炎天下で体育があろうと、何十年に一度の酷暑が訪れようと、俺が頑なに半袖を避けるのは、なるべく素肌を――ほくろの多すぎるこの肌を見られたくないからだ。
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