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開け放たれた窓から、風が吹き込んできた。
カーテンが柔らかく膨らみ、ひらりと翻って一瞬でしぼむ。と同時に風がこちらへ雪崩れこんできて、髪がなびいた。
反射的に髪を手で押さえる。首筋にある大きなほくろが見えてしまうからだ。
さらさら、と耳許で音がする。女子の長い黒髪がこういう音を立てるなら風情もあるが、いかんせん俺は男だ。面白くもなんともない。ただ情けないだけだ。
俺の髪は、これもまた母親に似てひどく細い直毛で、シャンプーのCMにでも出てきそうな、無駄につやつやさらさらした髪なのだ。
ほくろだけでなく、髪のことでも「女みてー」とからかわれたことがあるくらいだ。
男のくせに癖一つないドストレートヘアなんて格好がつかないから、パーマの一つでもかけたら少しはマシになるんじゃないかと思っているのだが、あいにくパーマやカラーは校則で禁止されていて、わざわざ違反して教師から目をつけられる勇気もない。
大学生になったら、とも思うが、そんなことをしたら知り合いから『大学デビュー』とかからかわれそうなので、結局やらずじまいになるような気もする。
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