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そんなことをつらつらと考えていた、その時だった。
「――ふひぇっ!?」
俺の口から、自分のものとは思えない奇声が飛び出した。
一瞬後には「しまった」と青ざめたけれど、時すでに遅し。教室中の視線が俺のほうに集まっていた。
これまで存在を消して生きてきたのに、この一瞬で全てが水の泡だ。やってしまった、と後悔の嵐に襲われる。
でも、しかたがなかった。授業中に突然、後ろから襟足をつつかれたら、誰だって声を上げてしまうだろう。
俺はばっと後ろを振り向き、「な、な……っ」と言葉にならない呻き声を上げながら、犯人と思われるやつを見る。
するとそいつは、確信犯的な表情で、にたあと笑った。
「超新星発見」
後ろの席の真山は、わけのわからない発言とともに、またも、ぶすりと指先で俺の後ろ首をつついた。
どうやら、風に吹かれて舞い上がった髪の隙間から、襟足のほくろを見られてしまったらしい。
自分では見えないが、小学校の頃の同級生から『ここにもでっかいほくろあるぞ』と指摘されたことがあるのだ。
俺は反射的につつかれた部分を髪ごと手で押さえ、やつを睨みつける。
周りの席のやつらが、「えっ、何、けんか?」とざわざわしだした。
ああもう、最悪だ。
変な声を上げてしまって、しかも他人を睨むところも見られてしまって、今まで空気だったはずこ俺が、ものすごく目立ってしまっている。
最低最悪だ。これからまたあの頃みたいな、からかわれる日々がやってくるのか……。
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