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「何てことしてくれたんだよ!」
一瞬、ニーエは何が起こったのか分からなかった。
声をあげたのは助けられた男子生徒だった。支える枝葉から飛び降りると、肩を怒らせてニーエの元へやってくる。
「新調したばかりの箒だぞ!どうしてくれるんだ!」
「待って、あの生け垣の向こうには…」
頭が真っ白のニーエに代わり、状況に気付いたアンナが一歩前に出る。しかし男子生徒はアンナを押しのけると、ニーエを乱暴に突き飛ばした。
肩に痛みが走り、バランスを崩したニーエはその場に尻もちをつく。
「お前、エルザと同じクラスのヤツだよな?俺が勝つのが気に入らないからって箒を壊したんだろう!」
「は……?」
思わず呆然と呟く。何を言っているのだろう。
これがわざとだと?勝たせないために、そうしたと思っているのか?
そんなくだらない理由で、ニーエが箒を壊したと思っているのか?
「―ふざけるな!!」
炎のように一気に怒りが燃え上がる。
自分の行為だけでなく矜持まで汚された。それが許せなかった。
「そんな卑劣な真似をするわけがないでしょう。私は『アセビの魔女』よ!!」
激流のように体中を巡る怒りに流されるままに立ち上がり、魔法の杖を掲げる。杖の先から零れる炎に、男子生徒の顔色が変わった。
ニーエはそのまま杖を振り下ろそうとし――
「おやめなさい!!」
校庭に響き渡った教師の声に、その手を止めた。
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