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……どうして、こんなことになってしまったのだろう。
事態は教師の介入によって終息した。濡れ衣は晴らすことができ、ニーエを突き飛ばした男子生徒は厳しい叱責と謹慎処分を受けた。
しかしニーエも同級生に魔法を使おうとしたことが問題になり、数日の謹慎処分を言い渡されてしまった。
そして今、ニーエは教師寮に設けられた謹慎室に閉じ込められている。
しかし辛いのは、謹慎処分そのものではなかった。
…仲間を、魔法で傷つけようとしてしまった。
怒りに囚われていたとはいえ、許されることではない。
才能がなくても、魅力がなくても、人を想う心だけは誰にも負けないと思っていたのに……
「私には、何もない……」
ベッドに突っ伏して呟けば涙が浮かぶ。どれだけ泣いても、涙が枯れることはなかった。
もうこの手には何もない。本も教師に取り上げられてしまった。
あの本が手元にあったら、どんな言葉が出てきただろう。ニーエが欲しいと思ったタイミングで、欲しい言葉をくれる本。あれがあったら―…
トサッ、
「――え?」
何かが落ちたような音。ニーエは顔を上げ…目を見開いた。
『アセビの魔女へ』。取り上げられたはずの本が、目の前にあった。
いつの間に?どうやって?疑問が浮かぶ前に、吸い寄せられるように手を伸ばす。
そしてニーエは、ページを開いた。
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