アセビの魔女

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―貴方は、悪くない。 「あ……ああ、あ……」 涙で前が見えなくなる。欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。 この本は、まだ自分を見捨てないでいてくれるのだ。 文字のひとつひとつをなぞりながら、ニーエは微笑んだ。 「私、貴方がいれば、他に何もいらない」 「ほんとう?うれしい」 突如子供のような声が響き、ニーエは瞳を瞬かせた。途端に冷たい何かに顔を掴まれる。 「うれしい、うれしい」 ぺたり、ぺたり、次から次へと顔に触れ、顎や髪を掴んでいく冷たいもの。 それは、小さな手の形をしていた。 「え?え?」 頭を、首を、ページを抑える手を、無数の手が掴んでいく。そのぶよぶよと柔らかい感触に鳥肌が立つ。 これはきっと夢だ。 そう思うのに、いつまでも目は覚めてくれない。 「わたしは『13の書』の9さつめ」 うそだ。うそだ。 こんなことが現実に起こるはずがない。 本から生えた無数の手が、自分を本の中に引きずり込もうとするなんて― 「あなたは9ばんめの……」
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