1人が本棚に入れています
本棚に追加
―貴方は、悪くない。
「あ……ああ、あ……」
涙で前が見えなくなる。欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。
この本は、まだ自分を見捨てないでいてくれるのだ。
文字のひとつひとつをなぞりながら、ニーエは微笑んだ。
「私、貴方がいれば、他に何もいらない」
「ほんとう?うれしい」
突如子供のような声が響き、ニーエは瞳を瞬かせた。途端に冷たい何かに顔を掴まれる。
「うれしい、うれしい」
ぺたり、ぺたり、次から次へと顔に触れ、顎や髪を掴んでいく冷たいもの。
それは、小さな手の形をしていた。
「え?え?」
頭を、首を、ページを抑える手を、無数の手が掴んでいく。そのぶよぶよと柔らかい感触に鳥肌が立つ。
これはきっと夢だ。
そう思うのに、いつまでも目は覚めてくれない。
「わたしは『13の書』の9さつめ」
うそだ。うそだ。
こんなことが現実に起こるはずがない。
本から生えた無数の手が、自分を本の中に引きずり込もうとするなんて―
「あなたは9ばんめの……」
最初のコメントを投稿しよう!