アセビの魔女

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「犠牲…!?」 並んだ文字の恐ろしさに、アンナは本を取り落とした。 「どうしたのアンナ、急に大きな声出して」 本棚の向こうからエルザが顔を覗かせるが、アンナは真っ青な顔で足元の本を見下ろしている。 「大丈夫?ニーエの事が気になるから調べるっていったのに……この本がどうかしたの?」 エルザは友人の様子に首を傾げながら本を拾う。 その本は花言葉が綴られたものだった。開いたページには、アセビの名とその花の絵、そして花言葉が記されている。 「なになに?純粋な心、犠牲、あなたと二人で旅を――」 窓も扉も固く閉じられた謹慎部屋。誰もいないベッドの上で、ページをめくる音が響く。 深緑の表紙の本は風もないのにひとりでにめくれ、ページを進めていく。 その黄ばんだ紙の上に、走り書きのような文字が浮かび上がった。 ―さあニーエ、二人で旅をしましょう。 ―永遠に。
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