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この世界には二種類の人間がいる。
魔法を使える者と、使えない者。
前者の多くは故郷を離れ、特殊な学校で魔法使いとしての教育を受ける。ニーエもその中の一人だ。
ニーエが通うこの学園の歴史は、数ある魔法学園の中でもとりわけ古く、英雄も罪人も同じくらいの数を排出している。歴史の節々で彼等が登場する事件の中には、書籍化されているものまであるほどだ。
その学園にあって、世界を救う程の才能もなく、闇の陣営に誘われる程の狡猾さも持ち合わせていないニーエは、日々をただ平凡に過ごしていた。
それでも毎日の生活に退屈しないのは、この友人達のお陰だとニーエは思っている。
豊富な知識を持つけれどオカルトの類が大好きなアンナと、活発で運動神経は抜群だけれど勉強が苦手なエリザ。二人と過ごす時間がニーエは好きだった。
「それで13の書って?13冊あるの?」
部屋に戻るなり、最初に口を開いたのはエリザだ。
ローブとブーツを脱ぎ捨てて、ベッドに転がり頬杖をつく。行儀は悪いが、見目の美しい彼女がやると妙に様になるから不思議だ。
「そう、13冊あるの。何でも悪い魔法使いが魔力を集めるために作り出した本で、本を読んだ人を取り込んでしまうらしいの。今まで何人か犠牲になっているらしいわ」
机の下から引き出した椅子に座りながら、アンナが答える。
「でもそんな話、ニュースじゃ聞いたことないよ。それ本当?」
問いかけながらニーエは出窓に腰掛けた。
「ニュースになっていないのは、その本が原因だって確信が持てないからよ。『13の書』というのも、とある悪い魔法使いの研究書に記されていただけで、実物を見た人間はいないらしいから」
眼鏡を指先で押し上げ、アンナが話を続ける。内容の物騒さに反して、その瞳は好奇心に輝いている。
「……ただ、被害者の周囲の人はみんな、失踪前に被害者が見た事もない本を持っていたって言っているの。その本が『13の書』なんじゃないかっていう話」
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