アセビの魔女

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「なんだか怖いな……」 ニーエは身震いをした。自分が借りてきた二冊の本を意識してしまう。タイトルを確認してあるから大丈夫とはいえ、話を聞いた後だと手に取るのが少し怖い。 「まあ大丈夫よ!私達にそんな怖いことが怒るはずないって」 ぱたぱたと手を振って、軽やかな声で笑い飛ばすエルザ。それだけでニーエは気持ちが軽くなる。 元気で楽観的な彼女は、こういう時に心強い。 「そうだよね。今の時代は大きな事件もないし」 ほっとして傍らの本を見下ろすと、窓に映った自分が視界に入った。外すっかり日が暮れていて、窓ガラスは磨かれた鏡面のようだ。 肩まで伸びた茶色の髪に、同じ色の瞳。アンナやエルザと比べると、外見も中身も平凡な自分の姿。 ニーエは窓から目を逸らすと、カーテンでそれを遮った。 「そろそろ夕食の時間かな?食堂に行こうよ」 明るさを装う自分の声が、少しだけ空しかった。
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