アセビの魔女

5/13
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「あら?エルザはもうお休み?」 本に没頭していたニーエは、アンナの声に我に返った。 あれからベッドに座り読書を始めたニーエ。散歩から戻ったエルザは就寝の挨拶をするなりベッドに潜り込み、夢の世界へ旅立ってしまった。 「おかえりアンナ」 本を閉じて長湯の友人へ声をかける。アンナは「ただいま」と微笑むと、ふとニーエの手元に視線を向けた。 「ニーエ、その本は?」 「これ?アンナが進めてくれた本だよ」 「ううん、そっちじゃなくて……その下にある本」 ニーエは自分の手元に視線を落とした。今読んでいた本は閉じて膝の上に乗せてある。 それをどけると、深緑の表紙の本が姿を現した。表紙にはくすんだ金で『アセビの魔女へ』と箔押しされている。 「ああ、こっち?気になったから借りてみたの」 「そんな本、あったかしら…?」 眉根を寄せて首を傾げるアンナ。 『13の書』にかこつけて自分を怖がらせる気だと気付いたニーエは、友人を笑い飛ばした。 「もう!そんな演技で騙されないんだからね。噂話っていったのアンナでしょ」 「それは、そうだけれど…」 「エルザも寝ちゃったし、私もそろそろ寝るよ。アンナもあまり夜更かししないようにね」 ニーエは本を枕元に置くと就寝の挨拶を告げ、アンナの視線を遮るように布団を頭まで被ったのだった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!