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「あら?エルザはもうお休み?」
本に没頭していたニーエは、アンナの声に我に返った。
あれからベッドに座り読書を始めたニーエ。散歩から戻ったエルザは就寝の挨拶をするなりベッドに潜り込み、夢の世界へ旅立ってしまった。
「おかえりアンナ」
本を閉じて長湯の友人へ声をかける。アンナは「ただいま」と微笑むと、ふとニーエの手元に視線を向けた。
「ニーエ、その本は?」
「これ?アンナが進めてくれた本だよ」
「ううん、そっちじゃなくて……その下にある本」
ニーエは自分の手元に視線を落とした。今読んでいた本は閉じて膝の上に乗せてある。
それをどけると、深緑の表紙の本が姿を現した。表紙にはくすんだ金で『アセビの魔女へ』と箔押しされている。
「ああ、こっち?気になったから借りてみたの」
「そんな本、あったかしら…?」
眉根を寄せて首を傾げるアンナ。
『13の書』にかこつけて自分を怖がらせる気だと気付いたニーエは、友人を笑い飛ばした。
「もう!そんな演技で騙されないんだからね。噂話っていったのアンナでしょ」
「それは、そうだけれど…」
「エルザも寝ちゃったし、私もそろそろ寝るよ。アンナもあまり夜更かししないようにね」
ニーエは本を枕元に置くと就寝の挨拶を告げ、アンナの視線を遮るように布団を頭まで被ったのだった。
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