46人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼します」
そう言いながら、校長室の扉をノックすると、
「どうぞ」
そんな校長の低い声を押し返すように扉を開けると
田紋潤三校長はグラウンドを見ながら窓際に立ちつくしていた。
その背中からは、どことなく憤りのようなものが伝わってきて
僕の背中にも汗が滲んでくるのが自分で分かった
ほどなくすると、
「ふーーむ」
と、鼻から息でもなく声でもないような唸り声をあげ、
ゆっくり振り向いた田紋校長を見ながら、僕は
「いつもながら思うことだけども
水戸黄門の悪代官にならオーディションなしでも受かりそうな顔だぜ」
そう心の中で呟いた自分の言葉を飲み込んだ。
田紋校長は
厚顔にオールバックの髪型、金縁の眼鏡を乗っけた鼻を広く拡げ、
仕立てのいいストライプの紺のスーツの上着のポケットに
両手を突っ込みながら
「多田先生・・・」
いきなり僕の名を噛みしめるように呼ぶと、
2、3歩歩み寄りながら矢継ぎ早に
「1回戦なんかで負けてたんじゃあ、
リトルの子らはうちを受験すらしませんよ、
もう、三十五年も甲子園から遠ざかり、ここ何年も常に2回戦負けだ、
この状況をどうお考えですかな?」
田紋校長は一気にまくしたてた。
最初のコメントを投稿しよう!