その2

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その2

校長室を出て 廊下をキュッキュッと スニーカーの 靴底を鳴らし歩きながら 「わかりましたなんて 答えちゃったけどさあ・・・・」 「・・・・・・」 「やっぱ、そんなの無理だぜ・・・」 思わず小声で呟いている自分がいた 隣の県の甲子園常連校の監督だった 森田監督を招聘した際に、 それまでコーチとして前監督の下でフォローしていた野球部OB連中は皆、 森田流指導の邪魔になるからと排除した、 その時の揉め様や憤慨ぶりが尋常ではなかった、 そんな騒動の顛末は僕も部長として嫌と言うほど味わっていて、 「今更OB連中が野球部に協力してくれるとは思えない」、 それが僕のその時の偽らざる思いだった。  職員室に戻ると、加奈が、 「多田先生、なんか浮かない顔してますねえ、やっぱり野球部の事でした?」 「森田監督が辞表出した」 「えー、マジで」 「そうなんよ、おかげで野球部OBや外部に適任者いないか、 すぐにあたれなんてお鉢が廻ってきて、 ホント俺なんかさあ、元々が、たまたまあてがわれた 野球部長みたいなもんなのに・・・」 「あてがわれた、それ、言い得て妙、うん的を得てる」 「そこ感心するとこじゃないっしょ、 あの頃は男子教諭で空いてるの俺しかいなかったし、     
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