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その4
「おかえりーー」
お袋の明るい声が台所から響くと、
「お兄ちゃんお帰りーーー」
と妹達の声も、どどっと続く、
いつもの我が家の音というか声だ。
僕の家は今時にしては珍しい子だくさんで、
僕が長男で、大学、高校、中学と、妹が三人の四人兄妹。
「おう、帰ったかあー ご苦労さん」
親父は発泡酒をグラスに注ぎながら、赤ら顔で微笑む。
くたびれたランニング姿は全然変わらないけども
さすがに最近は、天然パーマの縮れた髪の毛のてっぺんが
怪しくなってきている
妹たちが、反抗期らしいものもなく育っているのは、
このほのぼのとした親父と、
親父の倍ほどはある逞しいお袋のおかげだと思う。
そんな妹達とは違い、僕だけはいっぱしに反抗期もあった気もするが、
それは全然大したものでなく、ただの照れ隠しだったんだと今になって思う。
僕は鞄を置き、ネクタイを緩めながら、
「親父、ヤマケンさん覚えてる?」
「あったりまえだろ、ジャガーズの名監督を忘れるかよ」
「今、何してるかって知ってる?」
「いやあ、ジャガーズ時代は、おまえも知ってるように
練習後には必ず呑みに行ったり、
ほれ、みんなでキャンプとかも行ったろ、でも、中学にあがってからは、
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