その5

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その5

「どもども、土曜八時『あみや』いいよね」 タイキとカズにまたもや、ラインだ、 二人とも、あれこれ、ぶつくさ言いながらも来てくれる、 流石に幼馴染だけのことはある。 「多田ちゃん、焼き肉率高過ぎやって」 「そうやて」 「例の相談やら、どうせ」 「どうせって言うなよ、二人ともれっきとした  聖潤学園硬式野球部OBやろ、  母校愛ってもんがないんかいっ」 「で、どうなってるの?」  カズは遮るように僕に単刀直入に聞いてきた。 「OBの線も駄目だし、外部も適任者がいないみたいでさ」 「そんなんじゃ、秋季大会も間に合わんやん、  父兄からもクレームが出てくるんやねーの、このままじゃ」 「でさ、最後の手段を思いついたんやけど」 「最後の手段??」 「や・ま・け・ん・さん」 「ヤマケンさんて、ジャガーズの時のかあ?」 「勿論、俺もネットで調べたんだけど、野球経験がなくても  甲子園に導いた監督って意外にいるんやって、それに、ほれ、  卓也だって中スポのコラムでもヤマケンさんが、  ある意味原点だって、書いてあったしさ・・・」 「そういえば、卓也、名邦の時も一度練習試合で会った時、  昔話になって、ヤマケンさんのパチンコ打法とか磁石打法が、  今になって活きてるって言ってたよな」 「そうだよな、なんだかんだいっても、俺たちみたいな小さな町の  弱小チームを、県大会決勝まで進めさせちゃった伝説の人だかんなあ」 「まあ、確かに意外性と可能性はあるかもな、  今の子供らって、あんな風な大人の方がいいんかもしれんしなあ・・・」 「タイキおまえ、結婚もしてないのに爺爺くさい事言うよね」 「カズはどう思うよ?」 「まあ、どうせ35年も甲子園行けてないし、駄目もとと思えばいいかもな、  ヤマケンさんが監督するなら、俺らも、手伝いとか・・・ なあタイキ」 「お、おっ、おうさ、でもヤマケンさん、今どこで何してんだ?」 「幸次にメールしてんだけど、返事がないんよ、おまえら取れないか連絡」 「あっ、そういえばうちの妹、  幸次んとこの雪ちゃんと仲良かったから、そっちからあたってみ るか」 「妹繋がりか、その方が分かるかもな、すまんタイキ、大至急頼めるかな」
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