あるべき場所に

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あるべき場所に

 夫の海外赴任に帯同して、三年ほどアメリカで暮らしていました。駐在員の奥様方に誘われ、アメリカン・ヴィンテージの品物を求めて、ショップやモールを巡る「アンティーキング」なる趣味に目覚め、食器や雑貨をコレクションしていました。  その頃、息子の幼稚園を通じて知り合った現地の奥さんと仲良くなり、互いの自宅で子供を遊ばせている際、私のコレクションについて 「古い物には魂が宿るの。イイ魂もあれば、良くない物もある。ヴィンテージを買う時には慎重にね」 と、彼女がアドバイスをくれた事がありました。  神秘的にも見える青い瞳で語る彼女の話は実に説得力があり、私はそれまで購入した品々を彼女に見てもらう事にしました。 「安心して。どれも悪い邪気は感じないわ。でもコレだけは、日本には持ち帰らない方がいいかも」  そう言って、彼女はサイドテーブルに飾っていたアンティーク・ランプを指差しました。百合の花を模した釣鐘状のガラス製のシェードと、真鍮のベースが年代を感じさせるお気に入りのランプだったのですが、 「これは、この土地に置いておかないとダメ」  彼女はきっぱりと告げたのでした。     
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