ゆきだるまいたよ

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ゆきだるまいたよ

 K子さん家族にとって、それは初めてのキャンプ体験だった。  二歳の息子さんに自然と親しむ機会を作りたいと、K子さんのご主人は張り切ってキャンプ用品を揃え、万全の体制でキャンプに臨んだ。  予約した川沿いのキャンプ場にチェックインを済ませ、テントを設営し、K子さんが夕飯の準備をしている間に、ご主人と息子さんは川べりの散策へと出掛けた。  支度を一段落させ、K子さんも河原へと向かった。夏休み前の週末だからか、キャンプ場は意外に利用者が少なく、川のせせらぎや鳥の鳴き声などを存分に堪能することができた。 「ママー」  ご主人に手を繋がれた息子さんが、川上から戻ってくるのが見えた。満面の笑みの息子さんとは反対に、ご主人は沈んだ顔をしているように見える。待望のキャンプなのに、どうしたのかしら? などと考えていると、息子さんがK子さんに 「あのね、ゆきだるま いたよ」  と、嬉しそうに報告をしてきた。 「雪だるま? こんな季節に?」 「こぉんなね、おおきいの。おおきい ゆきだるま」     
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