ゆきだるまいたよ

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 両手を広げ、一生懸命話す我が子。7月のこの時期に何を見てそう言っているのかと、K子さんはご主人に尋ねようとしたが、ご主人は真っ青な顔をしてガクガクと震えており明らかに様子がおかしかった。 「どうしたの?」 「……違う、違うんだ」 「何が?」 「……雪だるまなんかじゃない、死体だった。ぶよぶよにふやけた水死体だったんだ」 「何それやばいじゃん、警察に連絡しなきゃ」 「違うんだって!」  日頃穏やかなご主人が放った大声に、Kさんはただならない事象が起きているのだと確信した。 「歩いていたんだよ! そいつ! ずいぶんと太った人が、向こうから手を振って歩いてくるなって、俺たちも手を振り返して挨拶したんだけど、近づいて良く見たら、そいつ、そいつ……」 「ゆきだるま、てぇ ふってくれたねぇ」  慌ててK子さんは、二人が戻って来た方角を確認するが、日が暮れ始めた河原は『たそがれ=誰そ彼』の言葉通り、ぼんやりとして良く見えない。  こんな場所で夜は過ごせないと言い張るご主人に根負けし、テントを撤収して自宅へ戻り、さんざんなキャンプデビューになってしまったのだとK子さんは苦笑した。 「初めてのキャンプ体験のつもりが、初めての心霊体験しちゃいましたよ」  K子さんのご主人は、揃えたキャンプ用品をネットで売り払い、その日からいっさい川魚は口にしなくなったと言う。
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