あるべき場所に

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 駐在を終え日本に帰国する際、良く言えば「信心深い」悪く言えば「小心者」な私は彼女の忠告通り、ガレージセールで同じ駐在員の奥様・Mさんに、そのランプを譲りました。もちろん「日本には持ち帰らないで」と念を押して。  帰国後日本で、現地で仲良くなった奥様方と定期的に再会して近況を語ったりしたのですが、Mさんと共通の知人であるKさんから、Mさんが(くだん)のランプを日本に持ち帰ってしまったという話を聞きました。約束を守ってくれなかった事に憤慨し、Mさんに連絡を取ろうとメールしましたが、なんの音沙汰もありません。  その後忙しさにかまけて、ランプの事は頭の片隅に追いやっていたのですが、久しぶりに先述のKさんと会う機会がありました。アメリカでの懐かしい思い出話に花を咲かせた最後に、 「……Mさんなんだけどさ」  と、Kさんは声を潜めました。 「彼女、例のランプ、アメリカ駐在する他のご家族に、現地に持って行ってもらうよう頼んだらしいよ。いらなくなったのなら日本で処分すればいいのに『絶対ちゃんと現地に届けて』って、怖いくらいに必死にお願いしてきたんだって」  Mさんの身に、何が起きたのでしょうか。なんにせよ、自業自得なので同情はしませんけれど。
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