ロッキン・グランパ

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ロッキン・グランパ

   夫の海外勤務に伴って、アメリカで暮らしていた頃の話です。  ボランティアで英語を教えてくださっていた現地のご婦人と仲良くなり、ご自宅に遊びに行く機会がありました。  ご婦人(仮にMrs.Aと呼ばせて頂きます)のお家の地下室は、豪華なオーディオルームになっており、週末にはご主人が友人を呼んで、大好きなフットボールの試合を大画面のテレビで楽しむ為の趣味の部屋なのだと教えてくれました。  テレビが一番よく見える場所に、一脚の年季の入ったロッキングチェアが置かれているのが目に留まりました。昔の西部劇映画に出てきそうな木製のそれは、歳を経て木材が飴色の輝きを見せ、背もたれ部分の彫刻も豪華で、とても味のある一脚でした。でも、黒を基調としたモダンインテリアでまとめていたそのオーディオルームでは、正直浮いて見えていました。すると、私が椅子に興味を持っていた事に気付いたMrs.Aが、その理由を話してくれたのです。 「この椅子はね、亡くなったアタシのグランパの思い出の品なの。ホントは暖炉のある部屋に置いていたんだけどね、ダメだったのよ」     
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