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確かに、暖炉の前にこの椅子があったら絵になると想像ができました。でも「ダメだった」とは?
「夜になるとね、暴れ出したのよ。ガタガタって横揺れで。そりゃあビックリしたわ。でももしかして、グランパに何か不満があってそれを伝えようとしているんじゃないかって考えたら、暖炉の部屋にはテレビがないって事に気づいてね」
Mrs.Aのおじいちゃんは、旦那さん以上に大のフットボールファンだったと言います。
「で、この部屋に置くようになったの。まだたまに動くわよ。試合の時とか、嬉しそうにスィングするの。でも贔屓のチームが負けると大変。またまた夜中に大騒ぎよ」
「怖くないの?」
私の問いかけに、Mrs.Aは、
「全然。だってアタシのグランパだもん」
と、大きな身体を揺らして笑い、さすがのお国柄だと感心しました。
「優しくて物静かなグランパだったのに、死んだら我がままになっちゃったのかしらね」
Mrs.Aの言葉に、(もしかして、椅子に取り憑いているのは、おじいちゃんではないのでは?)とも思いましたが……
「ロックなおじいちゃんね」
ロッキングチェアにかけた私の渾身のジョークに、
「そうね、ロックね」
ウィンクで答える陽気なMrs.Aに、悪い霊なんて憑くはずがないと、今でも信じているのです。
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