よそ者

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よそ者

 誠司さんは東京生まれの東京育ち。趣味のダイビングで訪れた離島の海に魅せられ、いつの日か島へ移住してダイビングショップを開きたいという夢を、三十路手前で実現させた。  島民から見れば自分はいわゆる「よそ者」だ。少しでも地元の人たちと打ち解けられるよう、誠司さんはショップの仕事だけではなく、青年団や村の集会にも欠かさず通い、島の為に貢献した。島の人に誘われれば、飲み会も二つ返事で参加する。ザルの様な連中に進められるままに杯を重ね、帰りはいつも泥酔気味でショップ兼自宅に戻るのが常だったが、何故か毎回、道に迷った。  日中島内を散策している時から、やけに道祖神やお地蔵さんの祠、小さな神社が多い島だなとは感じていた。やはり台風や水害などの自然災害が多いからなのだろうか、と。  飲み会の夜、千鳥足で家路を辿っていると、奇妙な事に祠や鳥居の数が増えている気がしたと誠司さんは話す。 「風がね、吹いてくるんですよ。その祠や神社から。その風に背中を押されるように、ふらふらと角を曲がりたくなって」  気がつけば小路に迷い込んでしまい、空の星を道標にする事も幾度となくあったと言う。     
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