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猫嫌い
Tさんのお母さんは、大の猫嫌いだった。
彼女が子供の頃、以前から職を転々と変えていた父親が、一獲千金を狙い、その土地で多くの成功者を出している『養鯉業』に手を出した。
しかし、あらゆる物を担保に入れて買い集めた錦鯉の幼魚を、何度も野良猫に襲われ全滅させてしまい、山のような借金が残ってしまった。そのためTさんのお母さん一家は、日々の食事にも困るほどの貧しい暮らしを送る羽目となった。
その後、Tさんの祖父に当たるお母さんの父親は、親戚を頼って造園業の親方に就き、なんとか生活を立て直す事が出来たが、爪に火を灯すような辛い子ども時代を送る原因を作った「猫」という存在が、憎くて憎くてたまらないのだと、Tさんは小さい頃から母親に聞かされて育った。
「なのに、お盆とかに母親の実家に泊まりに行った時に、家の中で猫の鳴き声が聞こえてきた事が、何度かあったんだよね」
猫嫌いだと言っていたのに、この家では猫を飼っているのかと不思議に思い、母や祖母に尋ねると、二人とも声を荒げて「そんなワケがない」とTさんを叱るので、Tさんも深く追求しなかったのだが、夜寝る前になると母親が
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