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「夜中に外で猫が鳴いても、絶対雨戸を開けるんじゃないよ」
と、何度も念押ししてきたのも、よく考えると奇妙だったと、Tさんは回想した。
「この間、本家の法事で親戚が集まった席で、皆にその話をしたんだけど」
Tさんの話を聞いた親戚たちが「さもありなん」という顔つきで、目配せをして頷き合っているのを不審に思い、その理由を問い詰めたところ
「おめさんとこは、ふっとつ(たくさん)猫を殺してきたけなぁ。恨まれてもしょうがねぇんさ」
と、耳を疑うような事を憐れみと軽蔑を込めた口調で告げられた。それは一体どういう事かと重ねて聞くと、Tさんの祖父や祖母はその昔、鯉を全滅させた猫を懲らしめてやろうと、近所に毒入りの餌をまくという暴挙に出て、地元の住民や親戚一同から非難を浴び、絶縁に近い状態だったのだと聞かされた。祖父も祖母もそして母も、還暦にも届かずに逝ってしまったのはそれが原因に違いないと、Tさんは皆から強く祈祷やお祓いを薦められたと言う。
「呪いとかを信じているわけじゃないけれど、あの家で確かに聞いた猫の声を思い出すと、なんか辛くてね」
Tさんはそれ以降、猫の保護活動を支援する団体へ、定期的に寄付をするようになったのだと話を締めた。
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