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おれの心の中に、他人の占める割合が少なかったってことか。
「俺が亮の心に最初に入り込んで、変えてみたかったんだ、密度。変わったか?」
「わかんない」
父を辱めるものは、皆、敵。
そして一番の罪人はおれだ。
おれの存在が罪だった。
罪が心に暗く蘇り、おれは響也に顔を見せることができなくなる。
「やっぱかわいいわ、亮」
響也はまたおれに罪を突き付ける。
響也の指先がおれのあごを優しく捕らえ、響也の唇が、おれの唇に重なる。
悔しくて辛い、おれは何で嬉しくなるんだよ!
大きな罪を犯しながら、その罪を見逃そうと、心が甚く騒がしい。
自分の悦びのために、他人への障害を顧みないのは、許されないはずなのに。
「自分を押し殺せるのは、優しい証拠だろ。俺は亮が優しいの、ちゃんと知ってるよ」
響也の声が届かなくなりそうなほど、心が軋んだ。
父のために他人を排除して、自分を幸福にするものをたくさん見逃してきた。
父のために、父さえも自分から遠ざけて、誰も、何も、なくなってしまったおれの中。
気付いたときには、他人を迎え入れる方法がわからなくなってしまった。
そしてもう、外から誰も立ち入らなくなってしまったはずなのに。
それなのに。
「そういう亮は、何で俺を欲しがるの?」
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