小説家さんとプロット

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********  窓が無いせいでいつ来ても薄暗い店内。長方形のその部屋を縦に仕切るように置かれた赤いカウンターを天井からぶら下がっている電球が照らしている。  そのカウンター奥の壁はドアがある部分を除いた一面が棚になっているが本来なら酒瓶が並んでいるそこにはそれらしきものがひとつも無く、その代わりに薬品が入っていそうな透明な瓶がずらりと並んでいる。  ひとことも声を発することなく店内に入ってきた少女は頼りない電球の明かりを頼りにカウンターの横に並んだ椅子を避けながら店の奥へと向かうと、しゃがんでカウンターの板をくぐる。 「今日は遅かったじゃない」  少女が立ち上がった瞬間、それが見えているかのようにドアの向こうから声が聞こえてくる。 「すいませんボス。今日は雨が酷くていつも乗っているバスに乗れませんでした」  声をかけられた少女は驚いた様子も無く聞こえてきた声にそう応えながら棚の横のドアを開けてその中へと入る。 「それは災難だったわね」  その声が聞こえてくるのとほぼ同時にもわ、と甘ったるいアルコールの臭いが漂ってくる。その臭いに気付いた少女はあきれた様子でふぅと息を吐くが、その臭いの元であろうソファに寝転がって気だるそうにぶらぶらと手を振る女性は手に持った瓶に口をつけるとそれを豪快に傾ける。 「そういう時は人を押し退けてでも乗らないと、いつか大事なものを逃すことになるわよ」 「もう逃したからここにいるんですが」  少女は会話をしながら部屋の壁際にぽつんとひとつだけ置かれたロッカーの前に移動し、持っていたレインコートをハンガーにかけてその中にかけると白いワイシャツと黒いスカートを取り出してロッカーの扉にかけた。 「今日一日呑んでいたんですか?」 「今日?私の今日は今はじまったばかりよ」 「そうですか」  彼女のボスが日が落ちてから起きるのは特別珍しいことでは無いのか少女は表情を変えることなく返事をすると着ていた服を脱いでロッカーに仕舞い、扉にかけた服に着替えてロッカーの扉を閉めた。 「それにしても散らかしましたね」  着替え終わった少女はそう呟くとテキパキとソファの周りに散らばった缶を集めてゴミ箱の前にまとめ、それをひとつひとつ足で潰す。 「お客かな」  あとひとつで終わりというところで少女は足を止め、カウンターのある店に繋がっているドアに視線を向ける。
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