小説家さんとプロット

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 どれくらいそうしていたんだろう。動揺していたせいで体感ではとても長く感じられたけれど実際はたった数十秒のことだったのかもしれない。どうすることも出来ずに固まっていると何の前触れも無く抱きしめていた腕の力が抜け、彼の体がすっと離れる。 「じゃ、じゃあその、私はこれで」  顔が火を吹いているんじゃないかと思うほど熱い。とにかく、おかしいと思われる前に帰らないと。そう思ってその場を離れようとするがその前に腕を掴んで止められる。 「フミさん、忙しい?」 「いえ、えぇ、」 「それ、どっち?」 「別に、その、あの、スキンシップに慣れていなくて」  私は何を言っているんだろう。  視線の先には大河さんに掴まれている自分の腕。 「分かってるよ。フミさん、慣れてないんだろうなって」 「そ、そうなんです。慣れてなくて、だからもし顔が赤くてもそれは慣れてないからであって、他意は無いんですよ」  大河さんの言葉が救いに思えて、ここぞとばかりに必死に主張すると彼はしばらく私の顔を見つめてから 「アイス、溶けちゃうから早く食べよう」  と言って掴んだ腕を引いてベンチへと移動した。 「フミさんはここね」 「あぁ、はい」  大河さんはそう言ってベンチの真ん中あたりを指さすと私の腕を離してベンチへと座る。私も返事をしながらその隣に座り、彼の手元を見る。 「アイスクリーム、ですか?」  まだドキドキと脈打っている心臓をなだめるために鼻からゆっくりと息を吐いてからそう問いかけると、大河さんは持っていたコンビニのビニール袋からピンク色の包みを取り出してそれを開ける。 「今日はうれしいことがあったから、ふたりで食べたいなと思って」  彼はそう言いながら牛乳ビンの形が連なっているアイスをふたつに分けるとその片方を私に手渡してくれる。 「い、いいんですか?」  それを受け取ってから不安になってそう問いかけると彼はこくりと頷く。 「母さんがよく言ってたんだ。うれしいことは誰とでも分けあいなさい。でも腹が立ったことは気を許せる人とだけ。つらいことは大切な人とだけ分かちあいなさいって」 「しっかりした人なんですね」  母の言葉を語る声色から大河さんが母親を大切に思っていることが感じられて、そう返事をすると彼は短く 「強い人だよ」  と言った。
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