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小説家さんとプロット
ふと目が覚めると部屋の中は既に明るかった。
そして枕元からは何か音が鳴っていて、
それはスマートフォンの着信音のような、
「えっ、」
慌てて音のしている方向に手を伸ばして手探りでそれを手にとり、耳にあてる。
「もしもし」
『能登先生』
寝ぼけ眼のまま電話に出ると、聞こえてきたのは聞き慣れた庵さんの声。
「先生なんて呼ばないでくだしゃ、ください」
『まだ寝ていたんですね』
「すいません」
謝りながら布団から抜け出し、ベットの上に座る。
『怒っている訳ではありません。今日、私が電話を差し上げたのはなぜだか分かりますか?』
「え?」
そう問いかけられて頭に浮かんだのは真っ白のままのパソコンの画面。
「プロット、順調ですよ」
『違います』
何とか誤魔化そうとなるべく元気に嘘をつくが庵さんはそれをぴしゃりと跳ねのける。
『SNSの件ですよ。こちらの要望どおりはじめてくださったのはいいんですが、ブルーについてで一晩で一万字も更新してくるとは思いませんでした』
「文字数制限あるせいで大変でした」
『そういうことを訊いているのではありません』
「順調に筆が進めば一万字なんてあっという間ですよ。メンバーのモガさんサクさんクロさんの三人の紹介と、好きな曲を数曲だけ紹介しただけで越えてしまったんですから」
『世間的には正気の沙汰では無いと言われても仕方ない所行なんですが。まぁ不利益になるようなことを投稿しなければ何を投稿しようと構いません』
「ですよね」
『ですが宣伝目的もあてはじめたんですから、せめて新刊の紹介くらい投稿してください。いっそこちらで作ったネット通販のページにリンクを貼るだけでも構いませんから』
「あ、」
『忘れてた。じゃありませんよ』
「起きたらやります」
『お願いします』
そのあとはいつも通り、プロットお待ちしています。がんばります。と挨拶を交わすと電話が切れた。
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