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「いや、それは……」
有田は私の手の中にある一冊の本について気にはしていた。
でも、有田に差出人不明のラブレターのことについて話しても仕方ないよね……。
「……ただの、気まぐれかな? あはは」
「何だそれ。じゃあそろそろ行くな。俺、部活あるから」
「うん……」
有田は、気さくで話しやすい男友達。
今まで壁なんて感じたことなかったのに、今初めて有田との間に壁を感じた。
それが切なくて辛くて悲しい。
*
「あーあ。もう、どうしよう……」
イマイチ釈然としない心境。
有田のことも、ラブレターのことも。
一冊の本の中に挟まっていた、二通目の手紙。
そこに鎌谷くんでもないと書かれていたことから、私は結局図書室に鎌谷くんを探しに行くことなく家に帰ってきてしまった。
しかも、昨日の手紙のことは忘れてって……。
一方的に送りつけておきながら、勝手だ。
でも……。
何で、私が浜松くんや鎌谷くんをラブレターの送り主だと思ったって、このラブレターの送り主はわかったのだろう?
テレパシー? まさか、ないない。
ラブレターのことは忘れろということは、きっともうラブレターの送り主を知る手がかりは得られないのだろう。
それにラブレターとは全く関係ないけど、有田に好きな人がいたことも、どういうわけかずっと私の心は引きずっている。
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