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それと同時に、私は瞬時に広げていた手紙を折り畳むと、封筒とともに本に挟んだ。
「……なんだ有田か。びっくりした」
有田は小学一年生の時から現在の中学三年生まで何回か同じクラスになったことがある男子。
そのせいもあってなのか、何かと絡んでくる。
「何だってなんだよ。ってか、また本借りたのかよ」
「え? いいじゃん、別に。あんたこそ、珍しく今日は本を借りに来たの?」
読書が趣味の私はよく図書室に本を借りに来るけれど、今まで図書室で有田の姿を見ることはあまりなかった。
有田は私が胸に抱えていた本に目をやる。
有田がこの本に興味があるとは思えないし、そのこと自体に全く深い意味がないことはわかる。
「そういうわけじゃねぇけど。ってか、それ、どんな本なの? ちょっと見せてよ」
だけど、差出人不明のラブレターを見られてからかわれるのが嫌で、私は思わず本を抱え込んで身を翻してしまった。
「嫌っ!」
「え……?」
「あ……」
有田と私の仲は決して悪くない。
むしろ、私にとって一番仲の良い男友達だと思う。
だから、こんな風に有田との間に気まずい空気が流れるのは、初めてだった。
「なんかごめんね。私、急いでるから……!」
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