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まぁ同じクラスとはいえ、ずっと私の席の方を見ている人なんていないだろうから、有田がわからなくても仕方ない。
「そっか、ありがとう」
「別に」
「あ、待って有田」
そのまま教室から出ていこうとした有田を引き留める。
「有田ってさ、突然知らない人から告白されたらどうする?」
「はぁ? 何それ」
ラブレターの差出人は私のことを知っていても、私はその人を知らないのだから、シチュエーションとしてはおかしくない。
だけど、有田は私のそんな状況を知りもしないのだから、明らかに不審そうな目を向けてくるのは無理ない。
「例えばの話だよ。ね?」
「別に……。普通に断るけど」
「何で?」
「だって知らない奴から告白されて付き合うか? 普通」
「そうだけど……。じゃあ知ってる人なら付き合うの?」
「付き合わねぇよ。俺、本命一筋だし」
「え……? 有田って好きな人いたの?」
ドクンと胸がいやな音を立てた。
何だろう、この感じ……。
「まぁ……」
「全然知らなかった。だって有田、全然そんな感じなかったのに」
「そうか? まぁ、おまえ鈍いもんな」
「な……っ!」
だけど、有田はそんな私を一瞥してひとつ深いため息を落とす。
「おまえこそ、何でそんなこと聞いてくるんだよ」
有田の視線が、心なしか私の手の中にある本に向けられているように見えるのは、私の考えすぎなのだろうか。
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