差出人不明のラブレター

9/14
前へ
/14ページ
次へ
まぁ同じクラスとはいえ、ずっと私の席の方を見ている人なんていないだろうから、有田がわからなくても仕方ない。 「そっか、ありがとう」 「別に」 「あ、待って有田」 そのまま教室から出ていこうとした有田を引き留める。 「有田ってさ、突然知らない人から告白されたらどうする?」 「はぁ? 何それ」 ラブレターの差出人は私のことを知っていても、私はその人を知らないのだから、シチュエーションとしてはおかしくない。 だけど、有田は私のそんな状況を知りもしないのだから、明らかに不審そうな目を向けてくるのは無理ない。 「例えばの話だよ。ね?」 「別に……。普通に断るけど」 「何で?」 「だって知らない奴から告白されて付き合うか? 普通」 「そうだけど……。じゃあ知ってる人なら付き合うの?」 「付き合わねぇよ。俺、本命一筋だし」 「え……? 有田って好きな人いたの?」 ドクンと胸がいやな音を立てた。 何だろう、この感じ……。 「まぁ……」 「全然知らなかった。だって有田、全然そんな感じなかったのに」 「そうか? まぁ、おまえ鈍いもんな」 「な……っ!」 だけど、有田はそんな私を一瞥してひとつ深いため息を落とす。 「おまえこそ、何でそんなこと聞いてくるんだよ」 有田の視線が、心なしか私の手の中にある本に向けられているように見えるのは、私の考えすぎなのだろうか。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加