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途中、別の村に寄ってもうひとり旅人を乗せた。初日に槍でボコボコにされていたフランス人だ。彼は下半身裸で槍に追い立てられ、白い尻丸出しでジープに乗りこんできた。
「おい、話が違うぞ!」
また同じやりとりが繰り返された。
午後になって、ようやく町についた。村でのスローライフが嘘だったかのように、世界は喧騒のただなかにあった。
廃棄ガスを吐き出すバイク、荷を積んだ馬車、クラクション、ひび割れたアスファルト、路上にへばりついた馬糞、ぺしゃんこになった空き缶、半裸の物乞い、砂煙、野良犬と牛、壊れた信号機、街は不浄のものの集合体だった。人は自らを家畜化することで繁栄したというが、その代償は……などとやけになにかを悟ったような気持ちで風景を眺めた。
ゲストハウスに着くと、オーナーのおじさんが出迎えてくれた。相変わらず、縮んだTシャツの裾から出べそがはみ出していた。
「よお、どうだったハーレム生活は?」
「まずまずだったよ」
「おれも二十年ぐらい前に村に泊まったんだ。お前、おれの娘ともやっちまったかな。ははは。まあ今日はゆっくり休め。前と同じスイートルームをとっといてやったぜ」
なにがスイートルームだ。お湯はすぐ水になるし、ゴキブリは出るし。と鼻語で言いそうになったが、彼にはわかってしまうかもしれないのでやめた。
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