鼻で語るひとびと

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 熱いホットシャワーを浴びながら考えた。フフンは別れ際になにを言おうとしたのだろう。完成しなかった会話の空白が、いつまでも僕の胸をしめつけつづけた。  おそらく、彼女は僕がそれを聞き取れないことをわかっていた。わかっていたのに、あえて言った。その理解できない言葉の壁が、僕と彼女たちの間にジャングルよりも深い隔たりとなって僕らを遠ざけていた。  風呂から出て清潔なシャツに着替え、パンとソーセージを食べてビールを飲んだら、狩猟採集民仕様になっていた身体はすっかりもとの都市生活者のそれに戻っていた。
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