情景

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書記官は全員で12人いる。本来実力選抜制だったが形骸化し、8人は貴族の世襲。残りは王都民会の実力者の子息が持ち回りで就任している。 私の父は王都民会で副議長まで務めた人で、その影響力によって私は今書記官という仕事に就いていると言って間違えはない。 現在書記官は諸侯会議の決定事項の文章化から勅書・法令の文章作成が仕事。 8人の貴族書記官を4人の民会書記官が補助してして仕事を進めている。 最終的に書記官の上司。書記官長殿が文章を精査して諸侯会議へ送付され、国王陛下の認可が与えられて正式な文章として国全体へ発布される。 勅書の制作を依頼された場合私に資料の検索が命じられる。過去の文章例を王立図書館の蔵書で調べる。勅書の写しは大量に保存されているので、必要な文章を書き写し、上官の書記官に提出する。単調ではあるが平穏な日々だったと思う。 8人の仕事を4人で補佐ので仕事量が多く、過剰になるときがある。その時は民会書記官候補の見習いに手伝いをしてもらう時もある。補佐役の補佐をすることで書記官の修行をすることになる。民会出身書記官4人枠はなかなか空かない。補佐役は知識量や経験値が求められ、自然と任期は長くなる。見習いは修行しながらで中々空かない書記官の枠を待っているのだ。私は父の影響力があっても見習いから5年かかった。それでも多くの前任見習いを追い越したので、恨まれもしているかもしれない。 貴族書記官は世襲で、ある程度つとめると一族の者に職を譲って他の役職へ転出してしまう。知識も経験もあまり多くない彼らを、私たち民会書記官が補佐しないと書記官の仕事が成り立たない。 今となっては、そういうシステムが出来上がっているのが王国書記官という仕事だ。 王国のそれぞれの仕事。王政のそれぞれの仕事は貴族と民会の強調協力がなければ、成り立たない。王都に住む貴族は決して民会を下に見ない。上流階級としているが、彼らは民会の人間の助けを必要としている。 とは言え政策の最終決定は、諸侯会議の4人の大公や諸侯貴族が行なっている。王政運営上の頂点にあたる部分に民会出身者はおらず、すべて貴族たち。とくに上級貴族が固めている。だから王都や王国の大部分を占める民の声が届かない。届いたとしても握りつぶされている。場合によっては民の声を上奏した者に罪を着せて、処罰するなどということも発生している。私は静かに怒りを感じている。
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