情景

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さて。遅れてしまったが、私が住まう王都について少し説明をしておきたい。 王城は小高い丘陵の頂点に作られており、都のどこからでもその威容を見ることができる。城の内部も広い。私が普段使う通路や部屋以外に行こうとすると迷ってしまうくらい王城は各王の時代に増築・改築が繰り返されている。 初代建国王陛下の時代より250年に渡り発展を続けてきた。昔は3つの城壁と王城背後にある河から運河をひくことにより、天下屈指の堅牢さをうたわれた都であった。 王国の中期時代には、周辺諸国を併呑、王都直接侵略の危機が消滅したことで、堅牢にする必要がなくなってしまった。 最初期の王都は騎士と貴族。彼らの生活をささえる民によって成り立っていたが、次第に王国が大きくなるにつれて、忠誠を誓う貴族の数も、王都に集う民の数も、増大の一途を辿る。城壁は最初1つだったが、王都拡大に合わせて城壁を増やしたという。ところが日照が悪い。息苦しい暮らしを送ることになったらしい。 結果3つあった城壁はすべて撤去されることになった。撤去する城壁の瓦礫の処理方法として、運河を埋め立てる方法がとられたが、すべての運河を埋め立ててもまだ大量に瓦礫が残った。そのため王都周辺の街道の道路改良に使われた。今も王都へ至る街道はただの土ではなく当時の瓦礫で舗装された状態になっており、大雨になってもぬかるみになることがない。 撤去された城壁跡地は、王都を貫く3本の街道に改良された。河を背後に持つ王都では王国中期時代以降半月型放射状に発展を続けた。その基準点として「城壁街道」はつかわれることになったのだ。 窮屈な城壁のあった時代から開放的な王都への変貌。 王都の風景はずいぶん変わった。と、私は幼少期に城壁時代を知る祖父から聞いた。
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