その記憶力、まさに本物

1/4
前へ
/30ページ
次へ

その記憶力、まさに本物

【七月二十三日(木) 天気・晴れ、気分・憂鬱】  いきなりどうしたかったって? これは日記だ。  この不可解かつ奇想天外で地獄のような日々を、まともな人間に戻った時に少しでも多くの人に知ってもらおうと、日記形式に記録を始めたのだ。  が、先に言っておくが、まだ字を書く事はできない。それどころか、二足歩行も今のところできる気配はない。  つまりこれは、俺の頭の中に記した日記ということだ。 そんなに記憶力が良いのかって? なめてもらっては困る。だてにトイレットペッパーの営業を二十七年間続けてきたわけではない。 あの巻物のようなロール紙を何千メートルと扱ってきたのだがら、記憶の巻物の方もちょちょいのちょいだ。  事実、九九の二の段だってまだ余裕で言える。五の段だっておてのもの。七の段だけは、ちょっと怪しい。  が、それが何だと言うのだ? とりあえず記憶だ。記録するんだこの日々を。  とりあえず、今現時点でわかっているポイントだけでも整理しよう。なぜならポイントを整理することによって、答えを導きだすことができるからだ。今分かっていることは……。 『二足歩行ができない』 『全身けむくじゃら』 『名前はきゅんきゅん』     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加