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その記憶力、まさに本物
【七月二十三日(木) 天気・晴れ、気分・憂鬱】
いきなりどうしたかったって? これは日記だ。
この不可解かつ奇想天外で地獄のような日々を、まともな人間に戻った時に少しでも多くの人に知ってもらおうと、日記形式に記録を始めたのだ。
が、先に言っておくが、まだ字を書く事はできない。それどころか、二足歩行も今のところできる気配はない。
つまりこれは、俺の頭の中に記した日記ということだ。
そんなに記憶力が良いのかって? なめてもらっては困る。だてにトイレットペッパーの営業を二十七年間続けてきたわけではない。
あの巻物のようなロール紙を何千メートルと扱ってきたのだがら、記憶の巻物の方もちょちょいのちょいだ。
事実、九九の二の段だってまだ余裕で言える。五の段だっておてのもの。七の段だけは、ちょっと怪しい。
が、それが何だと言うのだ? とりあえず記憶だ。記録するんだこの日々を。
とりあえず、今現時点でわかっているポイントだけでも整理しよう。なぜならポイントを整理することによって、答えを導きだすことができるからだ。今分かっていることは……。
『二足歩行ができない』
『全身けむくじゃら』
『名前はきゅんきゅん』
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