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何故ならキリンは立派な柵に入れられているし、人間だってたくさんいる。
それに小さな子供だって無防備に来ることもあれば、ラインナップが古い自動販売機だって置いてある。掃除のおばちゃんにはサボんなと言いたくなるが、それでもここはサバンナではない。
では動物園かと聞かれれば、それも実のところまだ怪しい。
何故怪しいかと言われれば、俺がいる場所がおかしいからだ。
よく考えてほしい。動物園と言えば子供から大人までが、個性豊かで表情豊かな動物たちを見に来る場所だ。見に来る場所が動物園だ。
なのに、何故俺が檻の中にいる?
これじゃあまるで自分の方が見世物ではないか。
確かに自分の人生は見世物のような、ネタにされる道のりだったかもしれない。でもそれは例えであって比喩であって、本当に見世物になろうと思って生きてきたわけじゃない。
なのに、何故奴らは柵の向こうから興味津々に俺を見てくる? そんなに珍しいか? 四九歳の坂田が。
ただでさえ連日見知らぬ人間たちに見られて苛立っているのに、その一つ向こうからはキリンが俺のことを見下してくる。
なるほど。肉体的だけでなく、こうやって精神的にも拷問を仕掛けてくる戦法か。
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