目が覚めたらパンダだった件。

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 このままではまともな人生の終わり方はしないだろうと思っていた矢先、俺の人生の終着駅は自分の想像をはるかに越えていた。  もう一度言う、俺はパンダになっていた。  この不可解な状況を整理するために、一度冷静になろうと立ち上がった。が、しかし、これはどうしたものか。両足に力はみっちり入るも、まともに立てない。 例えるなら、上司に無理矢理三軒目に連れて行かれた帰り、「大丈夫! 俺はちゃんと立てるから!」と最寄り駅の駅員さんに迷惑をかけている時ぐらいまともに立てない。  そんな馬鹿な。    焦る気持ち、はやる気持ちが混じり合う心境の中で、冷静な自分が顔を出す。おいおい坂田、お前はとうとう二足歩行もできなくなったのか?  どうしてそんなに仕事ができないんですか? と七つ下の後輩観月さんにはよく怒られるが、二足歩行まで出来なくなった覚えはない。領収書に自分の会社名を書くよりも、もっと正確に、もっと確実に二足歩行はできる自信はある。  なのにこの有様はなんだ?  その時、ふと気付いた。  いつもよれよれのボロボロになった黒の革靴を履いているはずが、自分の足に見当たらない。右足にも、左足にも、見当たらないのだ。 それどころか、生まれつき体毛は薄いはずなのだが、これまたどうしたことか、見違えるほど生えている。いや、見違い過ぎだ。     
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