あなたは立派な四足歩行歩行者です。

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が、だからと言っていつまでも四足歩行に慣れ親しんでいるわけにはいかない。 今はこれでも大丈夫かもしれないが、元の世界に戻った時に大変なことになるのは確実だ。 そりゃそうだ。例えばトイレットペーパーの営業に来た男が、いきなり四足歩行でビルの自動ドアを開けて受付に突っ込んできたら、あなたならどうする? しかも意気揚々に。 その時はきっと社長室に案内されるよりも、刑務所に案内されるだろう。あるいは精神科だ。 それに、四足歩行で出来る仕事はかなり限られてしまう。まず営業系の仕事は無理だ。移動するスピードが遅くなるし、手が使えないので鞄を持てない。 頭の中に必要な情報を全てインプットすればトークは出来るかもしれないが、「今すぐ紙がほしい!」と言われてもロールを持っていくことはできない。 そもそも、運転もできなければ、駅の改札でピッと電子定期を通すこともできない。あ、この場合は身長制限に引っかからず無料で通ることはできるのか? まあ改札の一つや二つ通れたところで、商談の壁はまともに通れない。これでもし契約が取れたとすれば、自分はもう紙を売る営業の神だ。その時はうちの社長に頼んで、「ペーパーゴッド」という二つ名をつけてもらおう。     
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