目が覚めたらパンダだった件。

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 昔、ギャランドゥという言葉が流行ったが、この両足に生えた毛はそんな生温いレベルではない。 芸術は爆発だ! という言葉を借りるなら、体毛が爆発だ! というセリフがまさにピッタリ。脱毛サロンの店員さんも、さすがにこの毛の量には白旗を上げるだろう。  なんて、そんな悠長なことを考えている場合ではない!   これは完全に異常事態だ。非常事態だ。  どう考えても、昨日はこんなに毛が生えてなかった。一昨日もこんなに生えてなかった。なのにたった一日で何があった? いや、うろ覚えな今朝の記憶でも、靴を履いた時にはこんな状態ではなかったはずだ。    過労な仕事をすると男性ホルモンが強くなり毛が濃くなるとテレビで言っていたが、たかだかトイレットペーパーの営業でそこまで過労になるものなのか?  会社の契約書はまともに読んだことはないが、労災は生え過ぎた毛にも対応してくれるのだろうか?  というより、そもそもここはどこだ? そしてお前らは誰だ?  さっきから柵の向こうではやたらと人だかりが出来ている。そのすべての人間が俺の顔を見るなり「パンダパンダ」と叫んでくる。違う。俺は坂田だ。  なんとかして名前だけでもと声を張り上げようとするも、喋れない。呂律がうまく回らないのだ。     
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