第二の名前

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 ハイスピード、猛スピードで檻の中を走り回るも、向こうも負けじと追いかけてくる。そして何を勘違いしているのか、柵の向こうからはわき上がる歓声。ここは新種の闘技場か?    あいつに捕まったらヤバい。ほんとうにヤバい。さっきから俺の頭の中で、世界大戦クラスの警報が鳴っている。何の理由があって、あいつは俺を追いかけてくるのか?  しかも手には大量の笹の葉が握られている。まったく予想できないプレイが始まろうとする恐怖心から、俺はただただ走った。周囲三十メートルにも満たない檻の中を、まるでサバンナに見立てるように、全力で走った。  しかし向こうはサファリパーククラスの従業員。サバンナの適応度は向こうの方がはるかに高い。そして二足歩行もできれば知恵もある。 氷山の一角のような岩の向こうで待ち伏せされた俺は、いつの間にか小路地に追いやられてしまった。おいちょっと待て。この檻のどこに、こんな小路地があったんだ?  そんなクエスチョンを考えている暇もなく、目の前にはサファリーパーク姿の変なオヤジ。後方は脱獄不可能な厳重な鉄柵。かっこ良く言うなら、ジ・エンド。わかり易く言えば、はい終わり。  今まで俺も四十九年生きてきて、色んな変人は見てきたが、中でもこいつは相当にヤバい。こんなけむくじゃらになった自分に対して、ずっときゅんきゅんしているのだ。     
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