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くるくる、くるくる。
「ああ、どうしたら良いのかしら。何もわからないわ」
そう呟きながら、深夜のバレエ教室で灯りも点けずに踊り続ける少女。
彼女は真っ白で美しいロマンチック・チュチュを身に纏ったまま、誰もいないホールで一人可憐に舞い続ける。
くるくる、くるくる。
一体どれ程の長い間、彼女はそうしていたのだろう。
気付くと、彼女のトゥシューズはつま先が擦り切れ、薄く血が滲み出していた。
そこから染み出した血が、彼女の白いトゥシューズをじわりじわりと赤く染めていく。
「ああ、それでも……こんなに長く踊っていても、私には、ジゼルの深く激しい恋心を理解することが出来ないの」
呟きながら回り続ける少女。その舞いは優雅でありながら、何処か深い悲しみを湛えているかの様だった。
くるくる、くるくる。
「どうしたら、相手の心が離れた瞬間、気が動転して死んでしまう位の恋が出来るのかしら」
くるくる、くるくる。
回りながら、彼女は必死に考えた。
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