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「……あれ……?」
朝起きたら、私の頭の中は全て真っ白になっていた。さながら、初期化したばかりのスマートフォンだ。何の情報も入っていない。
ただただ脳みそが入っているだけの、ただの箱である。
此処、何処? 私、誰?
泉の様に尽きない疑問ばかりが私の頭を埋め尽くしていく。
と、部屋の扉が開き、少しくたびれた感じの年老いた男女が顔を出した。
ベッドに横たわったまま、顔だけを動かし、二人の方を見遣る私。
すると、男は興奮気味に何かを叫びながら廊下に駆けていく。一方女の方はと言うと、滝の様に涙を流しながら、私の手を両手で握ってきた。カサカサして冷たい手だ。
ああ、もしかして、この二人は私の知り合いなのだろうか?
そう思った私は、女の方に話しかけてみる。
「ぁ……ぅ……」
おかしい。思った様に声が出ない。まるで、長いこと声を出しておらず、喉が出し方を忘れてしまった様だ。
そうやって、私が必死に声を出そうと呻いていると、男の方が白衣を着た人物を沢山連れて部屋に戻ってきた。きっと、あの白衣の女性達は医者で、周りにいる似た様なユニフォームを着た一団は看護師なのだろう。
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